通訳案内士は仕事があるの?通訳案内士制度と今後の将来性を解説!

2019.6.1 追記

2018年1月に通訳案内士法が改正されたことを知っていますか?

「通訳案内士」という職業がインバウンドの需要の急増に伴って世間の目を引くようになってきましたね。今後の日本の基幹産業のひとつとされる訪日観光ですが、その立役者として欠かせない人材である「通訳案内士」においても国が力を入れて制度を整えるようになってきました。

 

この記事では、ここ数年の日本における「通訳案内士」制度の変化や将来性について、通訳案内士専門の予備校であるTrue Japan Schoolがざっくばらんに解説します。

 

通訳案内士という仕事を初めて知った方もそうでない方もこの記事を読むことで、将来どのような形で訪日観光に携わっていきたいかがクリアになると思います。少しかたい話も交じりますが、ぜひ最後までお読みください。

絶対に覚えておきたい「業務独占」と「名称独占」

通訳案内士の業界に足を踏み入れたいという方なら絶対に覚えておきたい制度があります。「業務独占」と「名称独占」です。まずは通訳案内士制度について話をする前にこの2つについて押さえておきましょう。

業務独占資格

その資格を持っている人だけがその業務に従事することができる資格です。弁護士や医師、美容師などがこれに該当します。例えば、美容師免許のない人がカットをして料金をもらうと法律によって罰せられます。

 

通訳案内士も2018年1月以前は、この「業務独占資格」でした。

名称独占資格

有資格者以外の人がその名称を使用して活動、取引などの行為をすることが禁じられている資格です。名称を使用してはいけないだけで、誰もが業務に従事することができます(例:調理師・中小企業診断士など)。

 

2018年1月以降、通訳案内士資格はこの「名称独占資格」に変更となりました。


2018年の法改正によって有資格者以外もガイドができるように

無資格の方でもしっかりお金をもらってガイドできます

上記にも書いた通り、2018年1月は通訳案内士業界に身を置く方々にとって節目の年になりました。

 

68年ぶりに通訳案内士法が改正され、通訳案内士は「業務独占資格」から「名称独占資格」へ規制緩和、有資格者以外の方でも有償で(対価をもらって)ガイドができるようになりました。

 

これまで国家試験に合格してガイド業務に従事していた方や、これから資格を取得してガイドとして活躍を夢見ていた方に大きな影響を与えました。

 

「観光立国として大きな前進」「おもてなしの質の低下を招く」など賛否両論あったこの改正ですが、どのような背景から改正に至ったのでしょうか。

通訳案内士法が改正された背景

以下の2点が大きく改正に踏み切った要因だと考えられています。

  • 訪日観光客の爆発的な増加に伴うガイド人材のニーズの高まり
  • 英語以外のガイド不足の解決

訪日観光客の爆発的な増加に伴うガイド人材のニーズの高まり

2018年の訪日外客数が3,119万人となり、いよいよ大台の3,000万人を突破しましたね。堅実な成長を続けている訪日外客数ですが、この潮流に応えることのできるガイド人材が不足しているという問題も同時に浮き彫りになってきました。

 

法改正前は、試験に合格した後に住んでいる都道府県に登録してからでないと実際に稼働ができませんでした。2018年4月時点で、都道府県に登録している、つまり実際に稼働できる通訳案内士数は24,298名。日本を訪れるお客さんに対して、満足できる環境が整っているとは言い難い状況でした。

英語以外のガイド不足の解決

アジアからの観光客が全体の85%を占める
2017年国別訪日観光客数(クリックで拡大)

出典:平成30年版観光白書

近年の訪日観光客数の増加を大きく支えているのが、アジアからの観光客です。2017年の統計では、実に全体の85%をアジアからのお客さんが占めています。

 

 

しかしながら一方で、この押し寄せるニーズを解決することのできる人材、つまり英語以外の言語を扱えるガイドが不足していました。

 

例えば、平成30年度通訳案内士試験では、英語が584名合格に対し、ニーズが高いと見られる中国語でも61名、タイ語に至っては1名(!)となっており、実際のお客さんのニーズと逆転していることがわかります。

平成30年度 全国通訳案内士試験 言語別合格者数
クリックで拡大します

JNTOウェブサイトより、True Japan School編集

こういった現状を打破すべく、2018年1月、ついに68年ぶりに通訳案内士法が改正となったようです。

あれ?通訳案内士試験ってもうないの?

これまでの有資格者は「全国通訳案内士」へ

ここまで読むと、法改正後は、通訳案内士試験が不要となるのでは?という声が聞こえてきそうですね。しかしながら2019年現在も、通訳案内士試験は存続しています。

 

これまでに国家試験に合格して、稼働していた方は「全国通訳案内士」という名称に代わり、資格を持っていない方と比較して、語学力、日本文化に関する知識を強く有している者として位置づけられるようになります。

 

国も旅行会社や派遣団体に積極的に、稼働の余地がある有資格者を積極的にに利用するよう指導を行う方針を発表しています。

法改正から1年。有資格者の現状はどうなっているか

「そうはいっても有資格者以外でもガイドができるようになったのなら、試験を受けるモチベーションが下がるなあ…」という方もたくさんいらっしゃるでしょう。しかしながら、現状は国が定めた方針通り、有資格者が引き続き活躍できる環境は保持されているようです。ご安心ください。

マッチングサービス「Travee」運営終了から考える無資格ガイドのニーズ

Traveeのロゴ

2019年2月にサービスを終了した「Travee」

一つのケースを挙げてみましょう。2018年の法改正に伴い、日本人ガイドと訪日観光客をマッチングさせるウェブサービス「Travee」がH.I.S.によって本格的に稼働となりました。500人ほどのガイドが登録されていたようで、その当時(といっても2018年のことですが)は、インバウンドの受入環境の質を向上させる一助として話題になりました。

 

しかしオープンからわずか1年、2019年2月にひっそりと運営が終了し、ウェブサイトは閉鎖となっています。

訪日観光客の多様なニーズに応える人材が不足

サービスを終了した経緯として、様々な憶測が飛び交っていましたが、一つ考えられるのは、やはり資格を持っていない方々が、サイトを利用する訪日観光客の求める多様なニーズに応えることができなかったのではないか、ということではないでしょうか。

 

今はウェブサイトが閉鎖となり、内容を確認できないのが残念ですが、運営中は、「浅草観光2時間コース」などといったメニューがあり、それに訪日観光客が申し込んで、ツアーガイドできる日本人がホストするといったサービス内容だったようです。

 

ツアーが多様化する中で、それに対応できる方々が少なかったのではないか、というのが私たちの見立てです。

 

そもそも、通訳案内士試験がこれまで国家資格試験として実施されてきた意義は、一筋縄ではいかない訪日観光客のニーズにも対応することが可能なプロフェッショナルを輩出していくことでした。一度受験をされたことのある方であれば、お分かりかと思いますが、全国通訳案内士試験は1次試験・2次試験ともに日本全国の観光地の知識であったり、日本文化への深い造詣を問われます。

 

以前のブログでも解説したように、旅行会社やお客さんの立場に立てば、無資格である方よりも難関試験を突破して、幅広い知識を身に付けた方にガイドをお願いしたいと思うのは必然のこと。無資格の方の立場に立ってみても、自分が得意とするエリアではないガイドにわざわざ出向こうとは思わなかったのではないでしょうか。こうした互いのミスマッチが運営終了につながった一因だと考えられます。

ガイドをするならやっぱり資格を取得しておこう

2018年に無資格の方でも有償で通訳案内ができるようになりましたが、有資格者の方々が活躍されている現状は依然として変わっていません。

 

この状況は裏を返せば、「ガイドを依頼したい有資格者の方が少ない、でも無資格の方達をアサインしてクレームにつながるのは避けたい」と考える旅行会社や派遣団体が多い、つまり個人の頑張り次第では、一気にトップガイドに躍り出る可能性が高いということです。

 

True Japan Schoolの母体である通訳案内士団体「IJCEE」にも試験合格後からわずか2年で、年間稼働日数200日を超える方が少なくありません。まだまだ受験する価値の高い「全国通訳案内士試験」。True Japan Schoolと一緒に合格を目指してみませんか。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました!